症例報告 坐骨神経痛(左のお尻の痛み、左下肢全体の痺れ)

皆様こんにちは!桑名市江場の痛み・しびれ専門整体院「ハイブリッド治療院EVA」の院長 高田です。

今回の症例は、座っていたり、動いていると急にやってくる坐骨神経痛で悩まれていたSさん、40代、男性の方です。

仕事で荷物を中腰で持ち上げた際に腰痛が出現。腰の痛みは1週間ほどで良くなりましたが、その2、3日後に左お尻奥の痛みや左下肢の痺れが強く出現するようになりました。Youtubeでストレッチやマッサージなど試してみて2週間程様子をみたが、症状が変わらないため当院に来院されました。

普段のお仕事の関係から重たい物を持ち上げることが多く、ギックリ腰も年に3回は起こすとのことでした。

 

まずは姿勢から評価しました。

立位:頭部前方変位、肩甲骨外転、胸椎後弯・腰椎前弯の増強、骨盤前傾)

座位仙骨座り(頭部前方変位、肩甲骨外転、胸椎後弯・腰椎後弯、骨盤後傾)

   5分程同じ姿勢を取っていると腰がしんどくなってくるとの訴えあり。

 

次に整形外科テスト

・ケンプテスト(座位)

左ケンプテスト:右腰部に筋の伸張感。痺れや左椎間関節付近の痛みの訴えはみられず。

右ケンプテスト:左腰部に筋の伸張感。

・SLR

左右共に70°付近で大腿後面に筋性の抵抗感出現。

・ブラガードテスト

左右共に陰性。

・ボンネットテスト

左大腿外側に筋性の張り感。

MMT

股関節屈曲(腸腰筋) :右・左共に5(正常)

膝伸展(大腿四頭筋) :右・左共に5(正常)

足関節背屈(前脛骨筋) :右・左共に5(正常)                                                        

股関節伸展(大殿筋) :右・左共に5(正常)

FABEREテスト

 両下肢共に陰性

FADIRFテスト

左股関節にて痛みあり。どことはハッキリしないが、股関節の奥の方と訴える。

 *左股関節屈曲のみでも同様の痛みあり(屈曲110°付近)

 

神経のトラブルがないか、神経学的検査を実施。

・腱反射

左右の大腿四頭筋腱(+)、左右のアキレス腱(+)

・感覚検査(触覚)

足背、下腿外側共に左右差はみられず。

痺れ

起き上がりや立ち上がりにて坐骨神経領域に痺れがみられる(主に左下腿外側や左足背)。痺れは正座の後のような感じ。ふくらはぎを強く締め付けられるような痛みを伴うこともある。

体重を左下肢にかけると出ることもあれば、右下肢にかけても出ることもあるとのこと。座位・臥位でも痺れているときがあり、体幹の前屈にて痺れが消失。しかし毎回ではない。

 

圧痛所見

座位、伏臥位L1~L5腰椎棘突起に圧痛(特にL3、L4、L5棘突起にて強い)。

 

股関節周囲筋の触診。

左右の大腿筋膜張筋に張り(+)、縫工筋、薄筋、腸腰筋、大腿直筋には筋の張り感や圧痛はみられず。

 

骨盤帯の触診

左右の後仙腸靭帯に圧痛(伏臥位)

左右の腸骨稜外側の大殿筋起始部にて圧痛(伏臥位)

左仙結節靭帯に圧痛(伏臥位)

 

腹部の触診

回盲弁部や臍の周囲に圧痛(仰臥位)、腹直筋の硬さ

 

評価結果より、

左お尻奥の痛みは左股関節屈曲にて出現するが、周囲の筋組織を緩める操作や骨盤の後傾を介助しても痛みは変化しなかったため、インピンジメントではないと判断。坐骨神経の伸張刺激による痛みを感じているのではないかと推測。

棘突起部に圧痛があることや、骨盤帯の靭帯に圧痛があること、また普段の座位姿勢から棘上靭帯や棘間靭帯、後仙腸靭帯、仙結節靭帯に伸張ストレスが常に加わっていることが考えられる。

問診時の慢性的な便秘、食生活の乱れ、回盲弁部や臍周囲の圧痛、腹直筋の硬さから消化器系のトラブルが起きていると推測。

痺れの範囲や条件が変化すること、ケンプテストの結果や、体幹の前屈にて痺れが改善することもあることから椎間板や椎間関節の問題の可能性は低いと考えた。動きがキッカケで起こることから殿筋群のトリガーポイントや、坐骨神経とその周囲にある筋の滑走不全も可能性があると判断。

  • 靭帯の伸張ストレス(坐骨神経が仙結節靭帯の近くを走行しているため)
  • トリガーポイント(小殿筋が坐骨神経と似た範囲に痛みを引き起こすため)
  • 消化器系の問題(骨盤帯のトラブルに繋がること、腹膜を介して坐骨神経を刺激する可能性がある)

 

検査から上記の問題を考え施術をおこないました。

 

施術内容:

(初回)

坐骨神経の走行上での問題があると考え骨盤帯へのアプローチを実施

伏臥位にて後仙腸靭帯の圧痛が軽減する位置を保持する。左右の寛骨を前上方へ徒手にて誘導し保持。

また仙骨の筋膜を意識して押圧し、左右へ捻じり圧痛の減る方向で保持。→圧痛は軽減

 

左仙結節靭帯に対して伏臥位にて頭外方へ押圧をかけ、リリースがかかるまで保持。→圧痛は軽減

 

痺れに関しては変化はみられなかった。

 

(3回目)

慢性的な便秘、食生活の乱れ(コンビニ食、揚げ物が多い)、腹部の圧痛から、循環不良に起因した坐骨神経症状の可能性も考え、腹部へのアプローチも追加でおこなう。

 

回盲弁部を内側上方へ押圧し、抵抗感の強い方向を探してその位置を保持。

 

腸間膜根を小腸を介してアプローチ。小腸を左右に押して抵抗感の強い方へ誘導。その後上方または下方に誘導して抵抗感の強い方向で保持。

仰臥位にて右下部肋骨に手を入れ、肝臓に対して天井方向へ持ち上げるような操作をおこなう。また下部肋骨を両手で挟むようにして上方手でポンピングをおこなう。

 

左股関節を長軸方向に牽引すると緩い印象あり、股関節の圧着をおこなう。股関節周囲の筋緊張の低下を考え、動画を見ながらおこなっているストレッチ(殿筋群)を控えてもらうよう伝える。

 

痺れについては変化みられず。

 

(4回目)

今週は左下肢の痺れが楽だったとのこと。

 

左大腿外側の坐骨神経の走行上に過敏な点みられる。触れると「そこ来るね。」とのこと。神経マニュピレーション実施するが、過敏な状態は継続。筋膜と神経の滑走不全も考え、過敏な点を押さえて膝の屈伸運動をおこなうが状態は変わらず。

 

(5回目)

朝起きてからの左下肢の痺れや、締め付けられるような痺れ感は減ってきているとのこと。

回盲弁部や臍の周囲の圧痛は軽減している。

左股関節の長軸牽引による緩い印象は減ってきている。左大腿外側の過敏な点も軽減みられる

アプローチは継続

 

(7回目)

左下肢の痺れは良くなってきており、「お腹やったんかなー?」と。左臀部奥の痛みもたまに出る程度になったと話あり。

左股関節の長軸方向への牽引も左右差はなくなる。

 

その後坐骨神経痛の症状は改善しました。腰のギックリ腰を起こしそうな感じは残っているので、継続して診させて頂いております。

 

今回のクライアント様では慢性的にギックリ腰を起こしていることから、椎間板や周囲の神経、血管の損傷が起きていたことが予想されます。それらに加えて消化器系の問題が重なったことにより痺れや臀部奥の痛みが出現したのではないかと考えました。坐骨神経痛というと骨盤帯の問題や、梨状筋症候群などが多いです。しかし内臓への負担も坐骨神経痛の引き金になるのだと改めて実感させられました。

 

今後も多くの方を救えるよう日々研鑽していきます!長いブログでしたが、読んで頂きありがとうございました!

 

参考文献

  • Jean-Pierre Barral,Alain Croibier著 末梢神経マニュピレーション 科学新聞社 p259
  • Eric U.Hebgen著 オステオパシーの内臓マニピュレーション GAIA BOOKs p40~41
  • 中川貴之著 「末梢神経障害および末梢血流障害によるしびれとTRPA1」Journal of Japanese Biochemical Society 88(2): 237-239 (2016)